障がい児施設での出来事1

しあわせのみつけっこ

寄稿者DATA
現役保育士つくしんぼ先生
つくしんぼ先生
私立保育所・障害児施設勤務
保育園4年間後、現在、障害児施設の保育士。
子ども達と小さな幸せの見つけっこをするのが大好き〜♪

“しあわせ”を見つけると、誰でも嬉しくなるものですよね。
幸せって、貰うものでなく、落ちているものでもなく、もちろん買えるものでもない。・・・けれど、素直で、純粋で、あったかいハートがあったら、たくさん見つかる!そんな、”しあわせ”のみつけっこが、とっても上手で、ちょっとハンディをもっている可愛い子ちゃん達と出会い、感じたことを綴ってみました。

おはよう朝、子ども達が登園してくると、担任目がけて抱きついてくる子、玄関先でピョンピョンって2回ジャンプする子、目を合わせてくれるまで、ちらちら様子を伺っている子・・・。

そんな時、忙しい大人達は、「おはようは?」とお辞儀をさせる。
ん?この子達から送信されている”ことば”を、受信出来ているのかな?って時々思うのです。
もちろん、きちんと挨拶出来るように促す事も必要でしょうね。

けれど、まずは子ども達から発信される”ことば”に手で触って、目で見て、心の耳を傾けて一人ひとりからの”ことば”を、身体いっぱい受け止めてあげたいなぁって思います。

朝の集会

みんなが集まりました。クラスでのお話や小さな遊びの活動時間です。
保育者は、発達に必要な内容を選び、それを”ねらい”とか”目標”と名づけて、必死に頑張っています。

保育者が頑張っていることに、子どもたちが力をふりしぼってついて来る瞬間に、たくさん出会います。

先生は僕のことを観察しているけれど、僕だって、”先生が何を望んでいるのかな?”って一生懸命観察しているんだよ・・・。
何 か、大切なことを伝えようとしてくれているんでしょう?

子どもに合わせた保育をと言いながら、合わせてもらっているのは、私の方なのかな? と、時々振り返ってみています。
 
先生も子どもも、それぞれが”今”持っている力。前に進む時は、どちらかが一方的では、進まない。
お互いによ〜くバラン スをとりながら、一歩ずつ歩んでいけますように・・・。

おしっこ 〜J君の気持ちより〜みなさんは、トイレの中ってどんな気持ち?
先生に「おしっこよ〜」なんて言われてトイレに行った時は、ちっとも楽しくない。
・・・でもね、1人でこっそり行くと、ちょっとドキドキするけど、とっても楽しいんだ。
静かで。少し水の音が聞こえて。先生が貼ってくれた水族館のパンフレットやトーマスの絵があって。て・を・あ・ら・い・ま・し・ょ・う な〜んて指で追ってみたり。
鏡で顔の確認、「ウー、アー、イー、」。なかなかハンサムじゃん! 先生用のトイレって、そういえば見た事なかったなぁ。開けちゃえ!
「ふ〜ん、こんなのになっているんだ。」 ・・・バチン・・・(戸が閉まる音)  その瞬間、「何してるの?」って先生の声。
僕の楽しみ、これでおしまいかぁ。残念。また、先生の忙しい時を狙って挑戦するぞ。

密かな楽しみ、取ってしまってごめんなさい。「でも・・・だって・・・」。って言い訳している大人、結構いたりして??

今、何するの?自分は一生懸命伝えたつもり。子どもは「分かった」って返事。でも、「分かっていないじゃない・・・」って感じたことありませんか?
ちょっと、反省する瞬間ですよね。

「言葉」だけでも何となく理解できるけど、絵や写真があればよりよく分かる! (私達も写真や資料があると分かりやすいでしょう?同じですね)
視覚優位で見通しをたてるのが苦手な子には、写真や絵でスケジュール表を作ってあげると、安心して行動できる様子です。
写真で・絵カードで・文字で・大きくして・携帯用にして・等。  個々に寄り添いながら、その子の 分かりやすい方法を見つけて作ります。
(保育園の低年齢さんに、絵本で見せたりしますよね。特別な事ではないのです。年齢が大きくなると、つい言葉に頼りがちですが・・・)
実際につくしんぼの指導室で使っている物の一部を紹介してみます。

今日のスケジュール絵で見ると分かりやすい子が多いので、毎日の午前の活動を貼っておきます。数字が得意な子がいるので、番号をつけています。「今日は、○○するの?」「ん〜!(と指差す)」と、毎朝、この前に来て確かめている子を見ると、”分かろう”って一生懸命なんだなぁと感じます。

今日の活動はトイレ→赤いいすに座る→着替えをする→プール です。(こちらでは、個々に作られたスケジュールも同時に使っています)
スケジュール スケジュール2
 こんな形のスケジュールもあります。
一つずつの活動を書き、リングに綴ってめくっていく形式です。

おしぼりをたたみましょう食事準備中は、大人も忙しくって、なかなか落ち着きませんよね。おしぼりを使っていらっしゃる園では、ついつい大声で、「おしぼり、たたんで〜!!」なんて言うけど、なかなか伝わらない・・・。
そんな時は、このカードを置いておくと「ん〜こんなのにするのか〜!」と見てくれます。(保育室に折り紙の作り方が書いてあるのと同じです)濡れるので、透明テープで防水してあります。

おしぼりたたみましょう

食事中「お茶碗持って!」って言う方も言われる方も、いい気持ちしないでしょう。
そんな時、このカードが、目の前にあると、何となく同じ格好にしたくなる!
かなり汚れる確率が大きいのでカードクリアファイルにいれて表面を毎回拭いています。

これらは、ほんの一部の例です。現場で使う時は、その子にとって分かりやすいように工夫しましょう。身につき始めたら、徐々に減らしていっても良い部分もあるでしょうね。”絵カードが効果ある”のでなく、あくまでも、分かりやすくするための手段の一つとして考えてください。

食事中

外に出る準備 〜靴をはこう〜「お外に行くよ〜!」子ども達はそれぞれのペースで、靴を持ってきます。どの子も目的がある時はすばやい!!
自分の靴を見つけて、靴を揃えて持ってきて、靴を持ったまま段差に座って靴を置いて・・・・。書ききれない位の細かな動作がありますね。
「ちょっと急いでね〜」なんて軽々しく言っちゃいけないのかもしれないんですよね。子ども達、頭も、体もフル回転なのです。
ちょっと難しい所がある様子なら、手を添えて体の動きを伝えたり、どこがどうだから難しいのかな?って考えてあげたいものです。

散歩に行こう!1園の周りのちょっと裏手に出ると、自然がいっぱい!りんご畑、野菜畑、牛舎に田んぼ道。大人はね、そんな大きな物にしか目がいかないけど、子ども達はもっと面白い☆幸せ☆を見つけています。

R君・・・
「今日の風はちょっと冷たいね。べーって舌を出したらよく分かるんだよ。ベロベロべーッ!!」
T君・・・
「川の流れ、いい音。水の泡ってきれい。じーっと見ていたら、みんな違う泡なんだ。次から次へと出来ては消え、出来ては消え。先生は、「落ちる〜」ってヒヤヒヤしているけどさ、僕は夢中なんだ!」
S君・・・

散歩 散歩

「この道、どんどん進んでどんどん先に行きたいの。1歩歩くと1歩分、2歩歩くと2歩分、新しい景色になるの。そんな景色が見たいから、誰より先に歩きたいんだ。(先生は手をつなぎましょうって言うけどね、一人で歩くほうが楽しいんだけどな。迷子にならないように、僕だって気をつけるのに・・・)」

こんな幸せを教えてくれる子ども達に日々、感謝感謝です。

散歩に行こう!2跳び箱・平均台・マット。並べてサーキット遊びも楽しいけど、外にはもっと楽しい遊び場がある。
アスファルトの白線を歩いて、小川をジャンプして、木の葉を引っ張ったり拾ったり。大きな石ころの上を歩いて(お〜っとっと落ちそう〜)。
人は昔からこんな方法で無意識的な体のバランス機能を、身につけてきたんですよね。
車にのって、立派なアスレチックの公園に行くのもいいけど、家の周りを歩いて、登って、ジャンプして小さな冒険は最高!
その前に、僕達がのんびり歩ける場所、残しておいて欲しいなぁなんて、子ども時代はみんな思っているのかも。

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著作・制作など
保育士資格保持者なかのゆうとのイラスト
なかのゆうと(保育士資格保持)
監修・原作・執筆・編集
著書に『先輩が教えてくれる! 新人保育士のきほん(翔泳社)』、『保育士になろう!(青弓社)』。元私立幼稚園教諭。現役保育士や児童福祉施設などに勤務する方を取材し、保育現場のリアルを発信します。
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