障がい児施設での出来事5

しあわせのみつけっこ

寄稿者DATA
現役保育士つくしんぼ先生
つくしんぼ先生
私立保育所・障害児施設勤務
保育園4年間後、現在、障害児施設の保育士。
子ども達と小さな幸せの見つけっこをするのが大好き〜♪

“しあわせ”を見つけると、誰でも嬉しくなるものですよね。
幸せって、貰うものでなく、落ちているものでもなく、もちろん買えるものでもない。・・・けれど、素直で、純粋で、あったかいハートがあったら、たくさん見つかる!そんな、”しあわせ”のみつけっこが、とっても上手で、ちょっとハンディをもっている可愛い子ちゃん達と出会い、感じたことを綴ってみました。

4月のせんせい 〜Rちゃんの思いから〜新しい場所、新しい先生との出会い。
先生の顔、にっこり笑う所はママと同じだけど、本物のママにはかなわない。
ママに会いたくなって悲しくなってきた。

でも、泣きべそかきながら感じてきたよ。
せんせいが、ママみたいに優しい声をしていること。
せんせいが、ママみたいに私の安心を見つけてくれること。
せんせいが、ママみたいに私の気持ちが充電するまで待っていてくれること。

そんなせんせい、私、だんだん好きになってきたよ。

子どもの工作

5月のせんせい 〜N先生のつぶやきから〜「どうしたらいいか分からなくて・・・」。保育士1年生のN先生のつぶやきに
かつての私もそうだったことを思い出しました。

 大人も子どもも、素の自分を出し始めてきた頃。
保育園という大きな家族の中での自分の役割に、
不安を感じてくるのは当然だと思います。
そして、そんなつぶやきに、うまく返答できない私がいます。

 毎年、いろいろな人との出会いと別れを経験する度に、
表現方法がどうであれ、”人の思いに気付こうとすること”が原点。
そしたら何かが見えてくる、と感じるようになってきました。

 そして、1年生さんには、この仕事を目指した頃のピュアな気持ちはどんなのだった?と、やんわりたずねてみました。
自分の満足ではなく、子ども達の幸せを最優先に想っていたあの頃にいつもいつも戻らなくちゃ!

と自分自身へのメッセージを込めて。

子どもの工作

6月のせんせい 〜S君と実習の学生さん〜S君は昆虫博士。昆虫図鑑のカタカナをゆっくり読む私は、S君の相手不足な程おしゃべりは絶えません。昨年度M先生との深い関わり合いの中で輝きだした年長さんです。
ある日、実習の学生Tさんがいらしゃいました。「あ〜!!」のS君の声に振り向くとTさんにキック中。Tさんは、”お世話しなくては”の気持ちが強かったのでしょうか? 
S君の激しいキックに作り笑いで耐えています。激しいキックはさらに増し、泣き始めるS君。 自分の気持ちを収められず、S君自身もどうしたらいいのか分かりません。Tさんの作り笑いにも限界がきました。

後から、「あんな時、どうすれば良かったのでしょうか?」と質問がきました。「1番最初のキックは、どんな意味だったんだろうね。
S君、お話は上手なんだけど、 でもお話は苦手なんだよね・・・」と答える私に、Tさんは???の顔。

その日の実習日誌には、Tさんなりのたくさんの答えが書かれていました。
自分の困ったなぁから、”どうしてかな”と人の気持ちに気付こうとすること。そして、答えは一つだけではないこと。 
 
S君はTさんにたくさんの事を教えてあげたようです。

子どもの工作

7月のせんせい 〜ホイクシッテナァニ??〜新しい出会い・新しいスタートから4ヶ月。何だか、子どもと先生の関係もそれぞれ固まってきたようです。良い風にもその逆にも・・・。
ピアノ、体操、お絵かき等、それらが上手な先生は大人にとっても子どもにとっても 魅力的かもしれません。
でも、もっともっと大事な”何か”は、子どもたちそれぞれ自身が見抜いているかのようです。

この仕事ってなぁに?保育士ってなぁに?  ずっとずっと問い続けたい課題です。

子どもの工作

8月のせんせい 〜ママ、分かってくれる??〜大きい布にお絵かき。筆なんかじゃ物足りない!絵の具が入っていた容器をジャーっと ひっくり返して、あっという間に絵の具まみれ!
楽しいな!楽しいな!服にも足にも手にも、そして心にも色んな色の絵の具がつきました。

さぁお片づけ。シャワーを浴びるのですが手足に染み付いた絵の具は簡単にとれません。
お迎えに来られたママに、絵の具がついたことをお伝えしました。私の”ごめんなさいね”の心情を読み取ったK君は、不安気な顔で、ママと私の顔を見上げています。  「K、楽しいことして良かったね!」 その一言に、K君はニッコリ顔。

この親子の一瞬の笑顔のために、私たちが出来るお仕事はたくさんあるはず。

子どもの工作

9月のせんせい 〜ありがとう!〜ある一瞬、なぜかM先生の「ありがとう」の言葉が頭の中に響きました。
何がきっかけだったのか忘れてしまいましたが、嬉しいこととは逆の話をしていた時だったと思います。

  嬉しいことをしてもらって ありがとう
  教えてもらって  ありがとう
  考えさせてもらって  ありがとう
  泣いてもらって  ありがとう
  そばにいさせてもらって  ありがとう

「ありがとう。」 そう受け止めると、相手は今何を求めているか、ちょっと見えてきたような気がします。(相手が大人でも、子どもでも!) そして、そこからまた、新しいスタートが始まりそうです。

10月のせんせい 〜せんせいを独り占め U君を独り占め〜ある日、職員に無理をお願いしてU君と2人きりの散歩へ出かけました。
U君の好きな所でみちくさをしてこよう!そんな思いで園を出発。いつもは靴をエイッと投げて”僕だけ見ててね”の合図をするU君ですが、私の思いが伝わったのでしょうか?この日はすんなり靴をはいてスタンバイOK!  
小川の水に触って、小石をポチャン。葉っぱを千切っては投げ、水の音にウットリ。 
いつもは”危ない””先にみんなが待ってるよ”の気持ちが先に出てしまう私ですが、今回ばかりはU君のしたいことをゆったり見守っていました。 

一緒に無心になり水の音を聴くととってもいい音。小石を投げたときの水の動きはとっても素敵。葉っぱを入れた瞬間、葉っぱはクルリとひっくり返り面白い動きをします。 
楽しいね!素敵だね!面白いね!そんな2人の思いを共有できた時間はとっても短かったけど、充実したひと時でした。 
U君は「そろそろご飯だよ。帰ろう」にすんなり応じ、鼻歌まじりで帰路につきました。 ”子どもの気持ちを分かろう”そういつも思っているはずなのに、ふと気付くといつのまにか大人目線。反省・・・です。

子どもの写真

11月のせんせい 〜せんせいを独り占め T君を独り占め パート2〜夕方、お散歩にでかけました。
T君のお好きなコースへ出発進行。川のそばにはススキが満開!風が吹くとサワサワ〜っと良い音がして、美しい動きをします。
ぐんぐん進んで随分遠くまできました。帰り道の心配をしていた私でしたが、T君はまだまだ歩けるようです。

みちくさをしながら1時間半の旅でした。 “もう歩けないよ〜”と泣きべそかいてひっくり返っていた可愛い子ちゃんは、1年でこんなにも大きくなったんだね。 しみじみ感じるじとができる時間を作ってくれた職員に感謝!そしてみんなもこんな思いをしてみようね。

普段の気苦労も一気に吹っ飛ぶよ。そしたらまた明日から頑張れる!!

子どもの写真

12月のせんせい 〜クリスマスはパパママもワクワク〜サンタさん、来てくれるかな?

あのね、内緒の話だよ。みんなもワクワクしてるけど、実はパパやママもワクワクしてるの。

パパやママもプレゼントを貰えるの?

うんうん!パパやママは、物ではなくってもっともっと素敵なプレゼント!みんなが喜ぶ顔が見たくって、

パパとママによ〜く似たサンタさんがワクワクしながら考えてるの。どんなクリスマスにしようかなぁ〜って。  クリスマス近く、ママが私にこっそり相談。「どんなのがいい?」って聞いてくるけど、我が子が喜ぶことはパパとママが一番よく知っています。パパとママのワクワク感が私にとっての最高のプレゼント!子どもたちの幸せそうな顔が目に浮かびます。来年のサンタさんにも期待してますね。

1月のせんせい 〜ホントの気持ち〜「だいじょうぶ!」って声をかけたら、ニッコリ笑って座ったYちゃん。
これを見た他の先生が、真似して同じ言葉をかけると、突然あたふた涙目に。    
いろんな場面でそんな光景を見てきました。
「声のトーンとか大小とか、あとはタイミング。
それを意識して関わってみたら?」と後輩保育士さんたちにお伝えしてきたけれど。
・・・・どうやらそれは違うらしい・・・。

ホントの気持ちはどこから伝わってくるんだろう?
ホントの気持ちはどうやって伝わるんだろう?
表面をどんなに磨いていても、子どもたちは”中身”がどこからか見えているらしい・・・。

子どもの工作

2月のせんせい 〜ヒトって不思議〜「せんせいって強い時と弱い時があるね。ワッハッハと大きな声ととびきりスマイルで笑ったり、
顔中しわくちゃにして怒ったり。”ミテミテ”って合図を送っても全然返事をしてくれない時があるのに、
何でも無い所でぎゅっと抱っこしてくれる。・・・・・あれ?それって僕も同じだっけ。
一緒にいるのに、実はすれ違っていることはとっても多い。

でもその分、お互いの気持ちがぴったり重なった時は何倍も何倍も嬉しくって、”このヒトだ〜いすき”って心から思えるんだよね。
ヒトとヒト。つながり合ったり離れたり。すれ違いがあるからこそ、このヒトとつながりたいって思えるのかな?

子どもの絵

3月のせんせい 〜おおきくなったね〜あなたの後姿に、大きくなったなぁと感じるこの季節。
大人が困ったなぁとついつい思ってしまうことと、立派だなぁと思うこと、2つが同じ数だけ増えてきました。
いろんなことを感じる大事な時期を過ごしてきたんだね。 
 
今は、「これが正しいから、これをしなさい」とは教えません。
これからも、いろんな人・いろんな場所・いろんな気持ちと出会いながら、一歩ずつあなたらしい道ができますように・・・。

子どもの絵

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著作・制作など
保育士資格保持者なかのゆうとのイラスト
なかのゆうと(保育士資格保持)
監修・原作・執筆・編集
著書に『先輩が教えてくれる! 新人保育士のきほん(翔泳社)』、『保育士になろう!(青弓社)』。元私立幼稚園教諭。現役保育士や児童福祉施設などに勤務する方を取材し、保育現場のリアルを発信します。
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