公立保育園の民営化

民営化の進む公立保育園

段階的に民営化は進んでいる

数年前から公立保育園でも民営化の動きが進んでいることはご存知でしょうか?
東京都23区では平成16年度頃から民営化の動きがみられるようになり、今でも段階的に民営化されて行っています。

民営化方法には「委託」と「移管」の2種類があり、「保育園は公立のまま、保育業務を民間事業者に委託すること」が委託となり、「公立保育園を廃止し、新たに私立保育園(認可保育園)を設置して、保育事業を引き継いでいくこと」を移管としています。

例えば、東京都大田区の場合ですが、平成16年4月に山王保育園、西蒲田保育園の2園が民営化となってから、毎年2・3園ずつ民営化が進み、2019年4月までに30園がすでに民営化されていおり、令和6年4月には新たに12園増加して、42園が民営化される見込みです。

東京都大田区が今後民営化を予定している保育園
(太田区立保育園の民営化について のページです。より)
移管時期 保育所
令和2年4月 南馬込
令和2年4月 西糀谷
令和3年4月 東六郷
令和3年4月 東糀谷
令和4年4月 仲六郷
令和4年4月 大森西第二
令和4年4月 矢口第二
令和5年4月 南六郷
令和5年4月 みどり
令和6年4月 本羽田
令和6年4月 富士見橋
令和6年4月 いずも

この動きは東京のみに限らず全国的に広がっており、福岡県福岡市では、21か所ある公立保育所について7か所を公立保育所として存続させ,残りの14か所については平成17年~28年4月までの間に民営化が完了しています。

保育所が民営化するとどうなるの?

民営化することで今までと変わる点と変わらない点がでてきます。まず変わらない点としては、配置される職員数は児童福祉法に定める基準以上必要なため大きく変わることはありません。保育料についても民営化後も保育料の算定基準や徴収など自治体が管理し、補助金もでるので民営化によって保育料が値上がりするといったことはありません。しかし、延長保育料などは一部保育園で値上がりする場合があります。

変わる点としては、民間に委ねるサービス部分の給食やその園の保育方針や特徴などは変わる可能性が大きいです。また、運営事業者の職員を配置するため職員も変わることになります。

ただし、地方自治体によっては例外もある場合があるので、詳しくは各自治体の民営化に関する方針などを確認するとより詳細なことがわかるはずです。以下は一例としてあげた民営化に関する東京都板橋区の基本方針となります。

区立保育園の民営化とは(板橋区立保育園の民営化基本方針)

既存の区立保育園の設置・運営主体を板橋区から社会福祉法人に移行し、私立認可保育園として、保育サービスの更なる向上をめざした運営を進めていくものです。
私立保育園になっても、入園手続き、保育料に変更はありません。入園は区に申込み、区が決定し、保育料は区立・私立とも同額です。

なぜ保育所を民営化するのか?

行政が民営化を進める理由ですが、運営費の削減、多様化する保育ニーズへの対応、待機児童の削減といった理由があげられます。公立保育士を減らし民間に委託することで人件費を削減でき、延長保育や休日保育などにも柔軟に対応できるようすることで多様化する保育ニーズにも対応できる。まさに一挙両得にしようといった具合です。一般的にはとても画期的な政策と感じられるでしょうが、私たち保育士やこれから保育士を目指す方にとっては、安定して保育士を続けやすい公立保育士の道が狭まることは残念でなりません。

例えるならば、仮にA区にある職員20人が在籍する保育園が民営化されるとすると、そこに在籍している職員は全員入れ替わりになります。その園に勤めていた職員は、A区の他の園に異動になるか、空きがない場合はその他の職に異動になってしまう可能性も出てくるのです。『保育士』という仕事を生涯の仕事にしたいという思いで、念願の公立保育士になれたのが一転、想定外の仕事に就く可能性も出てくるかもしれません。

また、これから保育士資格を取得する方にとっては、民営化の流れを受けて、本年度の保育士枠での採用を行わないといった状況の可能性も高まってしまいます。

民営化の『移管』と『委託』の違いは?

冒頭でも少し述べましたが、保育園の民営化には大きく分けると『委託』と『移管』の2種類があります。

・委託(=公設民営化)とは、公立保育園のままで、保育園の運営を社会福祉法人や学校法人、企業、NPO法人などに委託して、保育園の運営を民間に任せることを指します。土地や建物は行政が管理し、実際の保育などは委託先が担当することになります。

・移管(=民設民営化)とは、通常、土地を無償貸与し、建物・備品を有償譲渡して完全に私立認可園となる場合を指します。土地や建物は有償で譲渡されます。

民営化の今後

民営化には賛否両論あり、賛成の意見を持つ方からは「多様な個性を持つ園が増える」、「保育の質が上がると思う」という回答が上位を占める一方で、反対の意見を持つ方は「保育の質が落ちると思う」、「営利目的の運営に疑問を感じる」と言った声も聞かれています。

どちらが正しいということはありませんが、地方自治体の財政の圧迫を考えると民営化の流れは今後も続くと思われます。行政としては民営化を任せる事業者をしっかりと選定し、民営化になっても質のいい保育が提供され、今までより利便性を高めた良い方向になっていくことを目指していただきたいです。

たのまな
保育士バンク
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著作・制作など
現役保育士つくしんぼ先生
なかのゆうと
監修・原作・執筆・編集
著書に『先輩が教えてくれる! 新人保育士のきほん(翔泳社)』、『保育士になろう!(青弓社)』。元私立幼稚園教諭。現役保育士や児童福祉施設などに勤務する方を取材し、保育現場のリアルを発信します。
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