保育士の給料

保育士処遇改善の効果あり、約17%の平均賃金が増加
【グラフ】保育士の平均賃金の推移
他業種の給料が伸びなむ中、保育士の給料はここ5、6年で増加傾向が続いています。総務省統計局(e-Stat)の賃金構造基本統計調査より直近8年間の平均年収を比較したところ、2013年(310万)から2019年(363万)と約17%の平均賃金が増加となっており、国や自治体が取り組む政策の影響が良い結果として数値に現れています。
また、所定内労働時間も2013年は167時間でしたが、2019年は163時間と労働時間が減少しており、保育士の待遇を取り巻く環境では賃金上昇と労働時間の減少といった良い傾向が続いています。
今後の展開も気になるところですが、待機児童問題・保育士不足が解決するまではさらに賃金改善と業務の効率化は進むと予測されており、保育士の年収は小幅な上昇を見込んでいます。
保育士の給料が低いイメージは本当なのか?
次に具体的な保育士の平均給与について解説していきたいと思います。
みなさまは保育士の給料といったらどのようなイメージをお持ちでしょうか?あまり保育士について詳しくない方は「給料が低い」といったイメージがあるかもしれません。では実際にはどうか?ここでは各調査資料を元に検証していきたいと思います。
まずは、厚生労働省が毎年調査している賃金構造基本統計調査の『保育士(保母・保父)』の項目から確認してみましょう。
2019年 保育士及び幼稚園教諭の平均賃金等の実態について
(2019年 賃金構造基本統計調査より)
- 平均年齢:36.7歳
- 勤続年数:7.8年
- 労働時間:163時間/月
- 超過労働:4時間/月
- 給与月額:244,500円
- 年間賞与:700,600円
- 平均年収:3,634,600円
○調査対象事業所:10人以上の常用労働者を雇用する事業所(民間)が対象。
冒頭でも述べましたが、保育士の処遇改善が進みここ数年で賃金が改善しています。
さて詳細をみていきましょう。ここで注意しておきたいのは『全国平均』の値ということです。どうしても都市部が賃金が高く、地方では賃金が低くなってしまう傾向があるためそのため、全国平均の値からでは、平均年収を超えてたから年収が高い、超えてなかったから年収が低いとは一概には言えません。そこで、参考として都道府県別の賃金格差指数を掲載しましたので、こちらを元に都道府県別の保育士の平均年収を計算してみましょう。
【グラフ】都道府県別所定内賃金の産業別規模別水準比較(2013年度)
上記の表は都道府県別の賃金格差を指数として表したものです。あくまで目安であり、保育士の業種に特化したデータではないため、「東京はずば抜けて給与が高く、逆に宮崎や青森などはだいぶ平均給与が低くなっているんだ」程度にとどめていただければと思います。
おおよその平均給与算出例
東京の場合:『東京都の指数121.5』に平均年齢:36.7歳、勤続年数:7.8年とした場合
平均給与:3,634,000円×(東京都補正として1.1倍)=3,997,100円 くらいが目安となります。
上記のような形で多少補正することで、より現実に近い保育士の平均的な給料の目安となります。
平均年収はよくニュースなどで発表されていますが、自分の年収と単純に比較はできません。今回のように住んでいる地域や勤続年数などによっても変わりますし、年齢でも大きく違います。
もしこれから保育所の就職・転職を考えているのでしたら、自分が就労を考えている都道府県の平均賃金を算出してみて、給料は平均比べてどうか?計算してみると判断材料の一つとなるはずです。
【資料B】福祉保育労働者の労働と生活の実態調査
調査時期 平成19年5月中旬 有効回答数2,822ケース
『正規職員の賃金額』 ※A | |
正規職員の賃金額 | 調査結果 |
10〜15万円未満 | 6.0% |
15〜20万円未満 | 35,9% |
20〜25万円未満 | 25.6% |
25〜30万円未満 | 13.3% |
30〜35万円未満 | 10.8% |
35〜40万円未満 | 3.8% |
40〜45万円未満 | 2.4% |
45〜50万円未満 | 0.4% |
50万円以上 | 0.1% |
『勤続10年以上では賃金格差が広がる』※B | |
勤続年数 | 賃金額 |
10〜15年未満 | 15〜20万円未満から20〜25万円未満 |
15〜20年未満 | 15〜20万円未満から30〜35万円未満 |
20〜30年未満 | 20〜30万円未満から40〜45万円未満 |
回答者の職務 | |
職種 | 回答者の割合 |
保育士 | 59.4% |
指導員 | 14.0% |
ケースワーカー、寮母、寮父 | 4.0% |
その他 | 22.6% |
参照データ『福祉保育労働者の労働と生活の実態調査』より
保育士の年齢層は20〜30代が中心
上記のデータ(表A)を見ると半数以上の方が25万円以内の給料となっていますが、そもそも『保育士』という職業自体が20代〜30代が6割以上を占める若者の職場(下グラフ参照)として位置づけられているため、他の職種の平均賃金と単純に比較するのは注意が必要です。1〜5年程の勤務年数の給料では、同業種、他業種とも大きな違いはありませんが、アンケート調査結果にあるように、勤続10年以上から賃金格差が目立ち始めます。(※B参照)
【グラフ】現役保育士の年齢調査
公務員並主任、一方新人とほとんど差がない主任
ここで考察できるのは、経験を重ねていくことで、主任などの園を取りまとめられる存在になり、給料面も反映して働く方がいる一方、仕事の責任は重くなるが給料はほとんど変化が見られない方もいるといった両極端な状態が存在するいうことがわかります。
通常は主任ともなると園にとっては欠かせない人材となり、給料もそれに見合った受け取るのが普通ですが、保育施設によっては、給料は新人の保育士を大きな違いがない保育園もあります。そういった保育園はどう見極めたらよいのか?やはり好きな仕事でも給料がいつまでたっても変化がなければメンタル的にも意欲は半減してしまうと思います。そこでどういった特徴があるか調査してみました。
給料の上がらない施設の特徴は?
調べてみた結果、次のような特徴が見られました。
(対象は同窓生、保育研修で知り合った方々、コミュニティサイト等)
・小規模な保育施設
・『結婚したら退職』といった暗黙のルールのようなものがある園
現時点では、以上のような施設に傾向があるようです。
小規模な保育施設では、園長の力が大きく、園長の存在だけで園が回ってるような施設だったり、サービスや施設が充実してる大規模の保育施設に園児が流れてしまい、経営するのがやっとといった施設に多く見られる様です。
『結婚したら退職』のような風潮のある園は、理由は異なるにしろ、若い人材を雇用することで人件費を低く抑えて経営している園です。
仕事は勤務年数が長くなるにつれ居心地もよくなるものですが、せっかく長く勤めるのではあればやはり正当に評価していただきたいものです。同じ時期に資格をとった友人より、「責任のある主任で勤務時間も多いのに給料は下。」といったことにならないようにぜひ、職場は探しは慎重に焦らず行っていただければと思います。
では、給料の上がる施設の特徴は?
先程は給料の上がらない保育園の特徴を挙げさせていただきました。では、給料面で、しっかりしている可能性が高い保育園はどのような特徴があるか?
(※ここでは公立保育園は除きます。)
一番のおすすめは、『公立保育園から民営化をされた保育園』です。
近年、公立保育園の民営化が加速しているのはご存知でしょうか。(よく知らない方は当サイト『公立保育園の民営化』を確認してみて下さい。)
民営化されると、私立保育園が元公立保育園を運営することになるのですが、その私立保育園は行政側から選定されて運営を委託されます。保育園ならどこでもいいというわけではなく、市町村ごとに基準が設けられています。決して、入札や抽選で運営の権利を取得できるわけではないのです。
一例として、箕面市の民営化について見てみましょう。
『箕面市立保育所の民営化について』の一文には以下のように記載されています。
民間法人の選定方法など
運営主体となる民間法人(社会福祉法人などの公益法人)は公募し、専門家などで構成する 法人選定委員会を設置して客観的・専門的観点から選定します。
法人の選定にあたっては、法人または法人を構成する職員の保育所運営経験をはじめ、児童福祉に対する考え方や保育計画及び長期的かつ安定的に運営ができることといった総合的な観点から審査を行います。
一文には『長期的かつ安定的』とあり、財政的に盤石でないといけないことがわかります。財政的に盤石ということは、保育業界全体から見てみると、給料面でもしっかりとしている園の割合が高いといえるのです。
私の周りにも何人か民営化された園に勤めている友人・知人がいますが給料面で安定している方が多いですし、離職率も低いです。
もし今後、就職先を探す機会があれば、『民営化された公立保育園』を就職先の一つの基準として参考してみると良いかもしれません。

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