小学生からの影響力

小学生の影響ってすごい!

寄稿者DATA
現役保育士スプリ先生
スプリ先生
保育士を経て、現在では園長に就任
園長に就任し、めっきり子どもと遊びこむ時間がなくなってしまい、本音は寂しいのですが、これも役割分担だと自分に言い聞かせ頑張ってます。

子ども達と外遊びのときよく「おにごっこ」とか「○○おに」をするのですが、なぜか子ども達ってオニをしたがりませんか?(うちの園だけかなぁ?) 僕は最初にオニを決めるとき希望者を募ります。必ず何人かの子どもが元気よく名乗りを上げます。もちろん全員は無理なので(最終的にはそれもありですが・・・)希望者の中からじゃんけんで決めます。そして勝った子がオニです!? なんかおもしろいでしょ?  しかし・・・これがなかなか決まらない。

本当に見事なくらい何度やっても勝ち負けが決まらない。しかもやっと決まってもそれが要領の悪い子だったりすると他の子達に難くせを付けられてまた最初からやり直しです。「○○ちゃんが後出しだったよ!だから今のは無し!」「今僕のほうが先に出したぞ」など、本当かなぁと思いながらも少し離れてやり取りを見ているんですが、そのうち「××ちゃん(←僕のことです)、私が勝ったよ!」「やった~!俺が勝ったぞ!」となぜか何人もが同時に勝ったと言い張り、結局本当に勝ったのは誰だったのかわかりません。結局最終的には一番要領のよい子が毎回おにになるのです。だから「こおりオニ」のように最後までオニが変わることのない遊びでは、要領の悪い子はおにをする機会がなかなかありません。たまに見かねて僕もじゃんけんに参加してフォローすることもありますが、自分としては本来それはあまりしたくはないんですけどね。

ところが、そこに小学生などが加わるとすばらしい展開になりますね。 夕方頃、園庭で遠巻きにこちらを見ている卒園児を見つけたら、遊びに加わるようどんどん誘ってみます。大抵の子は「ちぇっ・保育園児相手か・・・」といった仕草で入ってきますが本心はまんざらでもないと顔にでてるけど・・・ だって、ついこの間まで夢中でやってたじゃない。

そんなことで園児からみるとちょっとお兄ちゃんの子どもが加わると空気が変わります。たまにわざとちょっかいを出して自分の強さを誇張してみるリーダー格の園児もいますが、軽くあしらわれ相手にされないところに自分では届かない年齢の差を思い知らされてしまうんでしょうね。大抵の子は「このお兄ちゃん、どんなに走るのが速いんだろう!」「どんなに上手に逃げるんだろう!」と興味しんしんです。そして園児達は目の前で自分では出来ない素早い動きをやってのけるお兄ちゃんを尊敬の眼差しで見るまでに本当に時間はかかりません。(私達大人も見習わなくっちゃね。) 

 「すごいね!××ちゃん(←僕のことです)もタッチされちゃったね!」と園児。「そりゃそうさ、だって小学生だもん!やっぱりすごいよね~!」とお兄ちゃんにも聞こえてしまうように叫ぶ僕。そして問題のおに決めじゃんけんのときです。正義感の強い小学校のお兄ちゃん。「おい!今お前負けたぞ!」「お前は後出しだから駄目!」と次々に審判をかってでます。子ども達も尊敬するお兄ちゃんの前では素直に従うことがかっこいいことでもあるかのように従順です。いつもは要領のいいリーダー格の子も一緒になって審判の手助けをしているのが微笑ましいほどです。「どうせ××ちゃん(←やはり僕のことです)はじゃんけんでインチキしても本気で怒らないや」とたかをくくっている園児たち。そんな園児たちに「このお兄ちゃんすごい」「従ってでも仲間にしてほしい」と思わせる小学生って、保育者が大人としてあれこれ気を回してしまうことでは出来ない純粋な魅力で園児を引き付けているんですよね。やっぱり子どもって凄いなってと思ってしまいます。そしてお兄ちゃんから受けた影響は園児たちの頭にしばらくの間焼き付いているでしょう。お兄ちゃんの方もまた、良い経験を沢山して自信をいっぱい蓄えてほしいです。T君、K君、みんな、また保育園に遊びに来てね!

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著作・制作など
保育士資格保持者なかのゆうとのイラスト
なかのゆうと(保育士資格保持)
監修・原作・執筆・編集
著書に『先輩が教えてくれる! 新人保育士のきほん(翔泳社)』、『保育士になろう!(青弓社)』。元私立幼稚園教諭。現役保育士や児童福祉施設などに勤務する方を取材し、保育現場のリアルを発信します。
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